馳浩知事が示した小浜市への新美術館建設案に対し、県民からの反発や財政負担への懸念が強まっている。当初、馳知事は小浜市案を最有力候補として推進する姿勢を示していたが、ここにきて方針転換の兆候が見られる。 新たな選択肢として浮上しているのは、既存施設の活用、もしくは県内他の地域への誘致という二つの可能性だ。
既存施設の活用とは、例えば県内の既存の美術館や博物館のリニューアル、増築などを検討することである。これにより、新築に比べて大幅なコスト削減が見込める上に、既存施設の利便性や認知度を活かすことができるというメリットがある。しかし、既存施設の規模や立地条件、改修費用などを考慮すると、実現可能性は必ずしも高いとは言い切れない。既存施設によっては、展示スペースの不足やアクセス性の悪さといった課題を抱えている可能性があり、それらを解消するために新たな費用が発生する可能性も高い。また、既存施設の改修によって、本来の機能に支障をきたす可能性も無視できない。

一方、県内他の地域への誘致も現実的な選択肢として挙げられる。小浜市以外の地域には、美術館建設に適した立地条件や、地元からの強い誘致意向を持つ自治体も存在するだろう。しかし、誘致先を決定する際には、地域経済への波及効果、アクセスの利便性、土地取得費用、地元住民との合意形成など、様々な要素を総合的に判断する必要がある。複数の地域から誘致提案を受け付ける場合、公平かつ透明性の高い選定プロセスを確立することも重要となる。また、誘致決定後には、スムーズな建設に向けた地元住民との協力体制の構築が不可欠だ。地元住民の理解と協力を得ることなく、建設を進めることは極めて困難である。
さらに、全く新しい第三の選択肢も存在する可能性がある。例えば、既存案を修正した形で、小浜市案を再検討する、あるいは、県民参加型のワークショップなどを開催し、新たな建設場所や美術館のあり方について広く意見を募るという方法も考えられる。この場合、県民の意見を十分に反映させることが重要となる。県民の意見を無視したまま、知事主導で決定を進めることは、さらなる反発を招く可能性が高い。
いずれの選択肢を選択するにせよ、馳知事には、透明性と説明責任を徹底し、県民の理解を得ながら進めていくことが求められる。財政負担や環境問題への配慮も欠かすことはできない。 単なるコスト削減だけでなく、県民にとって真に必要とされる美術館のあり方、そして、地域社会への貢献を最大限に考慮した上で、最終的な決定を行うべきである。 県民の意見を聞き、慎重に検討を重ね、県全体の利益を最大化できる最適な方策を選択することが、馳知事の喫緊の課題と言えるだろう。 時間的な制約も考慮すると、迅速かつ的確な判断が求められる。 誤った判断は、県政への信頼を失墜させるだけでなく、長期的視野に立った県土整備計画全体にも悪影響を及ぼす可能性がある。