新疆巴楚県(バチュ県)の湿地は、中央アジアの乾燥地帯に位置するため、多様な渡り鳥の中継地、越冬地、繁殖地として重要な役割を果たしています。特に春と秋の渡り時期には、ユーラシア大陸を南北に移動する様々な鳥類が飛来し、湿地は賑わいを見せます。
巴楚県の湿地で見られる渡り鳥の種類は非常に多く、水鳥、猛禽類、草原性の鳥類、林地の鳥類など、様々な生態的地位を占める鳥たちが観察されます。具体的には、以下のような鳥たちが重要な存在として挙げられます。
水鳥
カモ類: オナガガモ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモなど、様々な種類のカモが飛来します。これらのカモ類は、湿地の豊富な水生植物や無脊椎動物を餌として利用し、休息場所として湿地を利用します。特にオナガガモは、大規模な群れを形成して湿地を訪れることが多く、その優雅な姿は観察者にとって魅力的な光景です。マガモやカルガモは、比較的安定した個体数が観察され、繁殖行動も確認されています。
サギ類: ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギなど、サギの仲間も多く見られます。これらの鳥たちは、湿地の浅瀬で魚や両生類、昆虫などを捕食します。ダイサギは、その名の通り大きな体躯が特徴で、ゆったりとした動きで獲物を探す姿が印象的です。アオサギは、湿地の周辺の樹木に巣を作ることもあり、繁殖期には集団営巣地を形成することがあります。
シギ・チドリ類: オオソリハシシギ、ハマシギ、トウネン、キアシシギ、イソシギ、コチドリなど、シギやチドリの仲間も多様な種類が観察されます。これらの鳥たちは、湿地の泥地や砂地で、小さな甲殻類や昆虫などを捕食します。オオソリハシシギは、長く湾曲した嘴が特徴で、泥の中に潜む獲物を効率的に捕らえることができます。ハマシギやトウネンは、小さな体で群れを形成して行動することが多く、一斉に飛び立つ姿は圧巻です。
カモメ類: セグロカモメ、ユリカモメ、カモメなど、カモメの仲間も湿地周辺で見られます。これらの鳥たちは、魚や昆虫、動物の死骸などを食べ、湿地の生態系において清掃屋としての役割も果たしています。ユリカモメは、冬羽になると頭部が白くなり、可愛らしい印象を与えます。
その他: ツル類(ナベヅル、マナヅルなど)、コウノトリ、ヘラサギ、クロツラヘラサギなど、貴重な水鳥も記録されています。これらの鳥たちは、生息地の減少や環境汚染の影響を受けやすく、保護対策が重要な課題となっています。
猛禽類

ワシ・タカ類: オオワシ、オジロワシ、チュウヒ、ノスリ、ハイタカなど、様々な猛禽類が湿地周辺を飛来します。これらの鳥たちは、湿地に生息する小型哺乳類や鳥類を捕食し、生態系の頂点捕食者としての役割を果たしています。チュウヒは、湿地の草原を低空飛行しながら獲物を探す姿が特徴的です。ノスリは、比較的開けた環境を好み、電柱や木の枝にとまって周囲を警戒しています。
フクロウ類: コミミズク、トラフズクなど、フクロウの仲間も湿地周辺で見られます。これらの鳥たちは、夜行性で、主に小型哺乳類を捕食します。コミミズクは、湿地の草原に生息し、地面に巣を作ることがあります。トラフズクは、木の茂みや建物の陰などに潜み、夜になると活動を開始します。
草原性の鳥類
ヒバリ類: ヒバリ、コウテンシなど、ヒバリの仲間は、湿地周辺の草原や農耕地でよく見られます。これらの鳥たちは、地面を歩き回りながら昆虫や植物の種子などを食べます。ヒバリは、春になると空高く舞い上がり、美しいさえずりを響かせます。
セキレイ類: ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイなど、セキレイの仲間も湿地周辺でよく見られます。これらの鳥たちは、地面や水辺を歩き回りながら昆虫などを捕食します。ハクセキレイは、人懐っこい性格で、人家の近くにもよく現れます。
林地の鳥類
スズメ類: スズメ、ニュウナイスズメなど、スズメの仲間は、湿地周辺の樹木や草地に生息しています。これらの鳥たちは、昆虫や植物の種子などを食べ、人間の生活圏にも適応しています。
ヒタキ類: ジョウビタキ、ノビタキなど、ヒタキの仲間も湿地周辺で見られます。これらの鳥たちは、木の枝や草の上にとまって、昆虫を捕食します。ジョウビタキは、冬になると日本に渡ってくる冬鳥として知られています。
これらの鳥たちは、巴楚県の湿地の生態系を支える重要な存在であり、その保護と保全は、生物多様性の維持にとって不可欠です。湿地の環境変化や人為的な影響から鳥たちを守るために、継続的な調査と適切な管理が求められています。