新幹線のぞみは静岡には止まらないのはなぜですか？

新幹線「のぞみ」が静岡駅に停車しない理由、それは単なる人口規模の小ささだけではない、より複雑な事情が絡み合っていると言えるでしょう。確かに、静岡市の人口は約70万人と、名古屋や浜松、東京などに比べれば少ないことは事実です。これによって、停車による経済効果が限定的となることはJR東海の判断に影響を与えていることは否定できません。しかし、人口規模だけで説明しきれない、より深い要因が存在するのです。

まず、経済効果の算出方法自体が複雑で、必ずしも人口規模に比例するとは限らないという点を考慮する必要があります。静岡市は、観光都市としての側面も持ち合わせており、新幹線停車によって観光客増加による経済効果も期待できます。しかし、その効果を定量的に把握し、費用対効果を明確に示すことは容易ではありません。既存の東海道新幹線沿線都市との競争も考慮しなければなりません。既に頻繁に新幹線が停車する浜松や名古屋と比較すると、静岡駅への停車による新規需要の創出は限定的になる可能性が高いです。仮に停車した場合、浜松や名古屋からの利用客を奪ってしまう可能性もあり、既存の駅への影響も考慮する必要があります。

さらに、JR東海の経営戦略も無視できません。JR東海は、東海道新幹線を主力事業としており、その運行効率の最大化を第一に考えています。「のぞみ」は、東京と新大阪間を最速で結ぶことを目的とした列車です。停車駅を増やすことは、運行時間の大幅な増加、ひいてはダイヤ全体の遅延、さらには車両数の増加などを招き、莫大なコスト増につながります。人口規模が小さく、経済効果が見込めない駅に停車させることは、JR東海にとって経営上のリスクとなるのです。

また、静岡駅周辺の駅構造も問題の一つです。静岡駅は、在来線との乗り換えがスムーズとは言い難く、新幹線停車による乗降客の増加に対応できるだけの設備拡張には、多大な費用と時間が必要になります。現状の駅構造では、増便やホームの延伸など、大規模な改修工事が不可欠であり、その費用も経済効果の算出において考慮されるべき要素です。

さらに、政治的な要因も無視できません。静岡県とJR東海の間には、リニア中央新幹線の建設問題を巡り、長年にわたる交渉が続いています。このリニア問題における利害調整が、東海道新幹線の停車問題にも影響を与えている可能性があります。リニア建設を巡る複雑な関係性の中で、新幹線停車問題は政治的な駆け引きの要素も含まれると言えるでしょう。

結局、「のぞみ」が静岡駅に停車しないのは、人口規模の少なさという単純な理由だけでなく、経済効果の不確実性、運行効率の維持、駅構造の問題、そして政治的な背景など、様々な要因が複雑に絡み合った結果であると言えます。これらの要素を総合的に判断した結果、JR東海は現状維持を選択していると考えられます。 単なる人口問題以上の、非常に複雑で多角的な問題であることを理解する必要があります。