ディーゼルエンジンの燃焼の仕組みは?

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ディーゼルエンジンは、予燃焼室で少量の燃料を先に燃焼させ、その高圧で残りの燃料を主燃焼室へ噴射・拡散させます。これにより、低温時でも確実な着火と効率的な燃焼を実現しています。二段階燃焼がディーゼルエンジンの特徴です。

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ディーゼルエンジンの燃焼は、ガソリンエンジンとは大きく異なる複雑なプロセスです。その中心となるのは、空気の圧縮による発熱を利用した自己着火という現象です。 ガソリンエンジンが点火プラグによって燃料と空気の混合気を強制的に点火するのに対し、ディーゼルエンジンは、空気のみを高度に圧縮することで発生する高温を利用し、噴射された燃料を自然着火させる点が最大の特徴です。この自己着火こそが、ディーゼルエンジンの高い熱効率とトルク特性の根源となっています。

まず、ピストンの下降行程により、シリンダー内へ大量の空気が吸入されます。吸入された空気は、ピストン上昇行程において急速に圧縮され、その過程で温度と圧力が劇的に上昇します。 圧縮比はガソリンエンジンよりもはるかに高く、通常14:1から25:1程度に設定されており、この高い圧縮比が、空気の温度を燃料の着火点(約250℃~500℃)以上にまで引き上げます。

ピストンが上死点に近づくタイミングで、高圧燃料ポンプから燃料噴射弁を通して、微細な燃料霧状の燃料がシリンダー内に噴射されます。 この時点では、既にシリンダー内の空気は高温高圧状態にあり、噴射された燃料は、空気中の酸素と接触し、自己着火を開始します。 着火の瞬間から急速な燃焼が始まり、膨大な熱エネルギーを発生させ、ピストンを下方に押し下げます。これがディーゼルエンジンの動力源となります。

しかし、この燃焼プロセスは、単なる一斉燃焼ではありません。実際には、複数の段階を経て進行します。 初期の自己着火は、噴射された燃料の一部が先行して燃焼する「予混合燃焼」と捉えることができます。 この予混合燃焼により、局所的に高温高圧領域が形成され、それが周囲の燃料と空気の混合気に伝播することで、より広範囲にわたる燃焼(拡散燃焼)へと発展していきます。 この燃焼の進行は、燃料噴射量、噴射タイミング、空気の渦流状態、そしてエンジンの負荷など、様々な要因に大きく影響を受けます。

予混合燃焼と拡散燃焼の割合は、エンジンの運転状態によって変化します。低負荷時には、予混合燃焼が支配的となり、比較的穏やかな燃焼が行われます。一方、高負荷時には、拡散燃焼が主体となり、より強力な燃焼が発生します。この燃焼特性の柔軟性が、ディーゼルエンジンが高いトルク特性を示す理由の一つです。

さらに、ディーゼルエンジンの燃焼効率を高めるために、様々な工夫が凝らされています。例えば、燃料噴射弁の設計は、燃料を微細に霧状化し、空気との混合を促進するために非常に重要です。また、シリンダーヘッドの形状やピストン形状も、空気の渦流を制御し、燃焼効率の向上に貢献しています。 近年では、排気ガスの浄化技術との統合も進み、よりクリーンで効率的なディーゼルエンジンの開発が進められています。 これら技術革新により、ディーゼルエンジンは、その高い熱効率とトルク特性を維持しつつ、環境負荷の低減にも大きく貢献しています。

ディーゼルエンジンの燃焼は、ガソリンエンジンに比べて複雑で、その制御には高度な技術が求められます。しかし、その複雑さゆえに、高い熱効率とトルクという大きなメリットを生み出しているのです。 そして、今後の技術革新によって、ディーゼルエンジンはさらに進化を遂げ、より持続可能な社会の実現に貢献していくものと期待されています。

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