医師に人気のない科は?

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医師に人気のない科では、内科が約3000人の志望者を集めて最大の母数を維持しています。産婦人科の専攻医数は約470人、救急科は約530人にとどまっています。
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医師に人気のない科:内科と産婦人科・救急科の実態

医師に人気のない科を選択する際、若手医師が直面する実際の専攻医採用数や医療現場の動向を把握することが重要です。
特定の診療科が敬遠される背景や現場のリアルな実態を深く理解し、正確な情報を確認しましょう。

若手医師のキャリア選択における診療科ごとの人気傾向

現代の日本の医療現場において、若手医師(専攻医)がどの診療科を志望するかは、個人のキャリアだけでなく今後の国家的な医療体制の維持にも直結する深刻な課題です。
志望動向は、勤務環境の過酷さや将来の私生活とのバランス、さらには法的なリスクといった複合的な要因によって大きく変化しています。これらは単に個人の好みの問題だけではなく、現在の医療制度が抱える構造的な負荷の偏りが直接反映された結果と言えるでしょう。医師がどの診療科を選ぶかは、個々の労働環境や生活の質(QOL)に深く依存しており、特定の診療科に志望者が集中する一方で、慢性的な人材不足が常態化する二極化が顕著になっています。

私自身の経験を振り返ってみても、初期臨床研修医の時代に各科をローテーションした際、夜間を問わず緊急呼び出しの電話が鳴り響く過酷な科と、ある程度スケジュールがコントロールできる科のギャップを目の当たりにし、同期たちが将来の選択に深く悩む姿を何度も見てきました。
当時はとにかく体力を最優先する働き方が美徳とされがちでしたが、近年はその価値観が確実に変化しています。若手の多くが、長く働き続けるために「自分の生活をどう守るか」という視点を現実的に重視するようになっており、それが特定の科を敬遠する動きへとつながっているのです。こうした選択の背景にある実態を、近年の統計推移や現場の声を交えながら具体的に掘り下げていきます。

医師に敬遠されがちな4つの診療科とその具体的な理由

近年、日本の新専門医制度における専攻医登録において、志望者が集まりにくく深刻な不足状態が叫ばれてきた代表的な診療科が、外科、産婦人科、小児科、救急科の4科です。
これらの診療科が敬遠される背景には、肉体的な消耗度、勤務の不規則さ、さらには患者や家族との間に生じる特有の精神的ストレスなど、多面的なハードルが存在します。各科の具体的な実態と、現場の若手医師が直面する課題について詳細に見ていきましょう。

外科:長時間の身体的負荷と長い修業期間の壁

外科は、数時間から時には10時間を超える長時間の立ち仕事や緊急手術が多く、肉体的な負担が全診療科の中でも非常に大きいことで知られています。
さらに、手術の技術を磨き、若手のうちに一人前の執刀医として認められるまでの修業期間が長く、キャリアプランの見通しが立ちにくいことも敬遠される一因です。私自身、手術室の張り詰めた空気の中で、先輩医師が何時間も集中力を切らさずにメスを握り続ける姿に畏敬の念を抱きましたが、同時に「この生活を20年、30年と続けられるだろうか」と激しい疲労感の中で自問自答した記憶があります。肉体的な限界を感じて途中で別の道へ転向する若手も少なくありません。

産婦人科:24時間体制の緊張感と高い法的リスク

産婦人科は、新しい生命の誕生に立ち会える大きなやりがいがある一方で、お産がいつ始まるか予測できないため、24時間体制での待機や緊急の呼び出しが頻発します。
勤務時間は極めて不規則であり、私生活の予定を立てることが非常に困難です。さらに、分娩に関わる事故は患者側の期待値が高い分、一生に関わる重大な結果を招きやすく、医療訴訟に発展する法的リスクが他科に比べて突出して高いという現実があります。裁判で医師側の過失が厳しく問われる事例への懸念から、志望を躊躇するケースが多く見られます。どんなに真摯に尽くしても、結果次第で激しい社会的責任を追及されかねないというプレッシャーは、若手にとってあまりにも重い負担です。

小児科:少子化への懸念と家族(親)への対応ストレス

小児科においては、急速に進む少子化の影響により、将来的な需要やクリニック経営の安定性に対する不安がささやかれることがあります。
また、診療対象となる乳幼児は自分の体の状態を言葉で説明できないため、客観的なサインから慎重に容体を察知しなければならない技術的な難しさがあります。これに加えて、我が子の病気に過敏になっている親や、理不尽な要求を突きつけてくるいわゆる「モンスターペアレンツ」への精神的な対応ストレスが大きく、医療行為そのもの以外の部分で心が折れてしまう医師も少なくありません。子供を守りたい一心とはいえ、周囲からの激しい感情を一身に受け止める現場の消耗は深刻です。

救急科:過酷なワークライフバランスと燃え尽きのリスク

救急科は、重篤な患者が次々と搬送されてくるため、常に一瞬の判断が命を左右する極限の緊張感にさらされます。
夜勤や急患対応の連続により、規則正しく十分な休息を確保することが極めて難しく、ワークライフバランスの維持は困難を極めます。このような環境下では、心身のエネルギーが完全に枯渇してしまう燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥るリスクが非常に高く、長期的なキャリアを形成しにくい科として敬遠されてきました。常に100パーセントの出力を求められ続ける現場では、どれほど使命感が強くても、数年で現場を去らざるを得なくなるケースが後を絶ちません。

近年の若手医師が重視する「QOL」と「低リスク」への二極化

近年の日本における若手医師(専攻医)のキャリア選択では、「生活の質(QOL)の高さ」と「訴訟リスクの低さ」を最優先する傾向が年々強まっています。
この価値観の変化に伴い、前述した過酷で高リスクな診療科が敬遠される一方で、QOLが維持しやすく命の危機に直結する急変が少ない、いわゆる「マイナー科」と呼ばれる皮膚科、眼科、精神科、麻酔科などへの人気が爆発的に高まっています。これらは当直や緊急呼び出しが比較的少なく、将来的にクリニックとして開業しやすいという利点もあり、定員に対する倍率が跳ね上がる一方で、不人気科との間で深刻な二極化を引き起こしてきました。

しかし、この固定化された二極化構造に、最近になって小さくない変化の兆しが現れています。
働き方改革による労働時間の上限規制の導入や、特定の外科系領域に対する診療報酬のプラス改定、さらには各学会による待遇改善の努力などを背景に、これまで激務とされてきたハードな診療科に若手が戻りつつあるという新しい動向も見られます。単純に楽な科を選ぶという画一的なトレンドから、制度のバックアップを受けて本来のやりがいや専門性を追求しようとする動きなど、医師のキャリア観はより複雑で構造的なシフトを迎えていると言えます。ですが、地域間や特定のマイナー科における採用枠の上限(シーリング)を巡る競争は依然として激しく、若手医師を取り巻く環境は決して平坦ではありません。この選択が将来の自分をどう左右するのか、慎重に見極める必要があります。詳細な違いについては、以下の比較一覧を参考にしてください。

数字で見る専攻医採用の動向と医療訴訟の実態

ここで、日本の医師専門研修における実際の専攻医採用数や医療訴訟のデータから、現場のリアルな実態を客観的に見ていきましょう。
近年の採用実績では、内科が約3000人の志望者を集めて全体の最大の母数を維持しています。注目すべきは、かつて激務の代表格とされてきた外科の動向です。長期の低迷を経て、近年の登録では外科の採用数が約1000人に達し、全体の約10パーセントを占めるまでに急回復を見せています。これは、働き方改革による労務管理の徹底や給与面での上乗せ措置が功を奏し始めた好例と言えるでしょう。その一方で、産婦人科の専攻医数は約470人、救急科は約530人と、一部で回復の兆しはあるものの依然として少数にとどまり、予断を許さない状況が続いています。 [3]

一方、医師が選択を躊躇する最大の要因の一つである「医療訴訟」の実態についても見ていきます。
日本国内における医事関係訴訟の新規発生件数は、年間およそ700件から900件の範囲で推移しています。診療科目別の総数で見ると、分母となる医師数が圧倒的に多い内科が最多を占めますが、従事する医師の数に対する「訴訟の発生確率(リスク)」として換算した場合、結果は大きく異なります。医師数あたりのリスクを算出すると、外科 産婦人科 小児科 救急科 敬遠される理由や整形外科、形成外科といった侵襲的な処置を行う外科系・お産に関わる診療科が上位を占めています。なお、裁判にまで発展した場合の判決における患者側の勝訴率(一部認容を含む)は、例年およそ20パーセント前後の水準にとどまっています。この数字は、大半の訴訟において医師の過失が法的 [5]に認められるわけではないことを示していますが、たとえ勝訴したとしても、判決に至るまでに平均して2年以上の長い審理期間を要するという事りは、現場の医師にとって計り知れない精神的・時間的コストとなり、特定の科を避ける心理的な抑止力として強く働き続けています。

小児科医を目指す方やキャリアについてもっと知りたい方は、小児科医の年収はいくらですか?をご覧ください。

人気診療科と不人気診療科の勤務環境・リスク比較

若手医師がキャリアを選択する際、各診療科の勤務形態やリスクの度合いは決定的な要因となります。志望者が集中する人気の科と、敬遠されがちな科の特徴を比較します。

人気な科(皮膚科、眼科、精神科など)

医療ミスの重大な結果につながりにくく、医師数に対する裁判の発生確率が低い

地域での需要が高く、比較的少ない設備投資で単独のクリニックを開業しやすい

疾患の特性上、一分一秒を争う急変や、患者の生命の危機に直結する場面が比較的少ない

予定手術や外来が中心で当直が非常に少なく、夜間の突発的な緊急呼び出しも稀である

不人気な科(外科、産婦人科、小児科、救急科)

不可抗力であっても一生に関わる重い後遺症や死亡に繋がりやすく、医師あたりの訴訟率が高い

大型の医療設備や多くの専門スタッフが必要なため、個人での開業ハードルが非常に高い

重篤な患者や予測困難なお産、容体が急変しやすい乳幼児を扱い、常に高い緊張感を伴う

24時間体制のシフトや過酷な当直、休日を問わない急患へのオンコール待機が日常的である

人気の高い診療科は、私生活の時間を確保しやすくQOLを高く保てる点が若手から強く支持されています。一方で敬遠される診療科は、命を救うやりがいは大きいものの、心身の消耗と引き換えにする場面が多く、労働環境の根本的な改善が今後も求められています。

若手医師・健太の苦悩と選択:激務の現場での気づき

都内の総合病院で初期研修を受ける健太は、幼い頃からの憧れだった外科医を目指していました。しかし、実際のローテーション研修が始まると、現実は甘くありませんでした。連日の徹夜に近い当直と、立ちっぱなしの長時間手術により、体力的にも精神的にも限界を迎えていました。

健太は自分の将来に強い不安を覚え、一時は医師としてのキャリアそのものを諦めかけました。先輩たちの疲弊した顔を見るたびに、憧れだけでは乗り越えられない壁の厚さを感じていたのです。そんなある日、体調を崩してしまい、数日間の休みを余儀なくされました。

ベッドの上でこれからの人生を考え直した健太は、医療に貢献する方法は一つではないと気づきました。復帰後、定時で勤務が終了し、患者のQOL向上にじっくり向き合える皮膚科の現場を経験したことで、視野が一気に広がりました。自分の心身を守ることが、結果的に長く患者に寄り添うことにつながると確信したのです。

健太は最終的に皮膚科への進路を決定しました。現在は専門医を目指して充実した研修生活を送っており、週末には自分の趣味の時間も確保できています。「あの時、無理をして外科に突き進んでいたら確実に燃え尽きていた」と語り、自分に合った環境を選ぶ大切さを実感しています。

主な内容の要約

キャリア選択の基準は「QOL」と「低リスク」へシフト

現在の若手医師は、拘束時間の長さや夜間呼び出しの多さを避け、自分の私生活を守りながら長く働ける皮膚科や眼科などのマイナー科を好む傾向が強まっています。

過酷な4科は構造的な原因の解決が急務

外科、産婦人科、小児科、救急科が敬遠されるのは、身体的負荷、精神的ストレス、高い訴訟リスクが原因であり、単なる人気の問題ではなく労働環境の改善が必要です。

働き方改革による新たな採用動向の変化

労働時間の上限規制や診療報酬の改定に伴い、これまで激務とされてきた外科系領域などで若手医師の採用数が反転増加するなど、キャリア観に構造的な変化が起き始めています。

他の関連問題

QOLが高いとされる人気の診療科はどこですか?

一般的に、皮膚科、眼科、精神科、耳鼻咽喉科などが人気です。これらの科は夜間の緊急呼び出しや当直が少なく、命に直結する急変が比較的稀であるため、ワークライフバランスを保ちやすいことが若手医師から選ばれる大きな理由となっています。

なぜ産婦人科や外科は医師不足になりやすいのですか?

長時間の立ち仕事や、24時間いつ始まるか分からないお産・緊急手術に対応するための不規則な勤務体制が肉体的な負担となるからです。また、万が一の事態における医療訴訟のリスクが他科よりも高く、責任の重さに比して十分な休息やリターンが得られにくいと感じる若手が多いためです。

新専門医制度になってから診療科の偏りは変わりましたか?

医師の偏在を是正するために地域や診療科ごとに採用数の上限(シーリング)が設けられましたが、都市部や人気科への志望集中は完全には解消されていません。ただし、最近では働き方改革の浸透により、労働環境が改善されつつある外科などで採用数が回復する新たな兆しも見られます。

参照文書

  • [3] Hokuto - その一方で、産婦人科の専攻医数は約470人、救急科は約530人と、一部で回復の兆しはあるものの依然として少数にとどまり、予断を許さない状況が続いています。
  • [5] Kobe-medsafe - なお、裁判にまで発展した場合の判決における患者側の勝訴率(一部認容を含む)は、例年およそ20パーセント前後の水準にとどまっています。