ビジネスで「とんでもないことです」は使える？

ビジネスシーンにおける「とんでもないです」：謙遜、感謝、そして危機管理

ビジネスシーンで「とんでもないです」という言葉を使うべきか否か。一概に「使える」「使えない」と断定するのは難しい、実に微妙な表現です。なぜなら、この言葉は状況によって意味合いが異なり、受け取る側の印象も大きく左右されるからです。

一般的に「とんでもないです」は、謙遜や感謝の気持ちを表す際に用いられます。例えば、相手から褒められた時に「とんでもないです、まだまだです」と返すことで、自分の能力を謙遜し、相手への敬意を示すことができます。また、何かをしてもらった時に「とんでもないです、ありがとうございます」と返すことで、感謝の気持ちを伝えつつ、相手に負担をかけたことを恐縮するニュアンスを込めることができます。

しかし、注意すべき点もいくつか存在します。

1. 場面と相手:

まず、TPO（Time, Place, Occasion）を考慮する必要があります。社内の親しい同僚との会話であれば、比較的カジュアルな「とんでもないです」でも問題ないかもしれません。しかし、上司や取引先など、目上の人に対しては、よりフォーマルな表現を使う方が適切です。例えば、「恐縮です」「恐れ入ります」「滅相もございません」といった言葉を選ぶことで、より丁寧で誠実な印象を与えることができます。

2. 状況の解釈:

次に、「とんでもないです」が、場合によっては相手を不快にさせる可能性があることを認識しておく必要があります。例えば、相手が真剣に褒めてくれたり、感謝の気持ちを伝えてくれたりしているのに、それを「とんでもないです」と否定してしまうと、相手の好意を無下にするような印象を与えかねません。そのような場合は、「ありがとうございます」「恐縮です」など、相手の気持ちを受け止める言葉を選ぶ方が賢明です。

3. 危機管理としての活用:

「とんでもないです」は、危機管理の観点からも活用できる場合があります。例えば、自分が担当したプロジェクトでミスが発生してしまった場合、謝罪の言葉に続けて「今後は二度とこのようなとんでもないことがないよう、再発防止に努めます」と述べることで、事態の深刻さを認識していること、そして改善への決意を示すことができます。ただし、この場合は、誠意が伝わるよう、真剣な態度で話すことが重要です。

4. 類語の活用:

上記を踏まえ、場面に応じた適切な表現を選ぶことが重要です。以下に、いくつかの類語と使い分けの例を挙げます。

• 恐縮です: 相手に迷惑をかけた場合や、相手の好意をありがたく受け止める場合。「この度はご迷惑をおかけし、誠に恐縮です。」
• 恐れ入ります: 相手に何かをしてもらった場合や、依頼をする場合。「恐れ入りますが、資料をお送りいただけますでしょうか。」
• 滅相もございません: 相手からの褒め言葉を謙遜する場合。「滅相もございません、まだまだ未熟者です。」
• もったいないお言葉です: 相手からの過分な評価を謙遜する場合。「もったいないお言葉、身に余る光栄です。」

結論:

「とんでもないです」は、状況によっては有効な表現ですが、ビジネスシーンにおいては、常に相手への配慮を忘れず、より丁寧な言い回しを使い分けることが重要です。TPOをわきまえ、相手の気持ちを尊重し、そして誠意を持ってコミュニケーションをとることで、円滑な人間関係を築き、ビジネスを成功に導くことができるでしょう。安易な使用は避け、状況を適切に判断し、最良の表現を選ぶことが、ビジネスパーソンとしての成熟度を示すと言えるでしょう。

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