ハイビームが原則になるのはいつからですか？

ハイビーム原則からロービーム原則へ：車検制度変更と安全性の向上

長年、自動車の車検においてはハイビームを用いた検査が一般的でした。しかし、2018年以降、状況は変化し始め、原則としてロービームでの検査が導入されました。そして、2024年8月からの制度変更により、この流れは決定的なものとなり、全ての車種でロービームによる検査が必須となります。この大きな転換点について、その背景や意味を深く掘り下げて考察してみましょう。

従来、ハイビーム検査が主流であった背景には、ヘッドライトの光軸調整の正確性をより厳しくチェックできるという利点がありました。ハイビームの強力な光は、照射範囲や照射角度のずれを明確に示し、検査官による正確な判断を容易にしました。しかし、この方法にはいくつかの課題がありました。

まず挙げられるのは、検査時の安全性の問題です。ハイビームを用いた検査では、検査員や周囲の車両、通行人への眩しさによる危険性が常に存在しました。特に、夜間や天候不良時の検査では、このリスクはさらに高まりました。また、検査場によっては、ハイビームの光による周囲環境への影響、例えば近隣の住宅への光害なども問題視されていました。

さらに、ハイビーム検査は、必ずしも実走行時の状況を正確に反映しているとは言えませんでした。ドライバーは日常的にハイビームを使用する場面は限定的で、ロービームでの走行が圧倒的に多いです。そのため、ハイビームでの検査結果が、ロービームでの実際の視認性や安全性と必ずしも一致しないという問題点が指摘されてきました。

こうした課題を背景に、2018年以降、原則ロービームでの車検が導入されました。これは、より現実的な走行状況を反映し、ドライバーの日常的な安全性をより直接的に確保するための重要な一歩でした。しかし、例外規定が存在したため、全ての車両がロービーム検査を受けるとは限りませんでした。

2024年8月からの変更により、この例外規定は完全に撤廃されます。これにより、全ての車種でロービーム検査が義務化され、ハイビーム検査は補助的な役割に限定されます。ロービームでの検査が徹底されることで、より実用的な視認性と安全性を確保し、交通事故の削減に繋がるという期待が寄せられています。

この制度変更は、単なる検査方法の変更にとどまらず、日本の道路交通安全の向上に向けた重要な取り組みと言えるでしょう。ロービームでの検査を徹底することで、ヘッドライトの適切な調整がより重視され、夜間や悪天候時の視認性の確保、ひいては交通事故の減少に貢献することが期待されます。

今後、ドライバーはロービームでの適切なヘッドライト調整の重要性を改めて認識し、安全な運転を心がける必要があります。車検を受ける際には、検査項目の内容を理解し、自身の車両のヘッドライトが適切に調整されていることを確認することが重要です。今回の制度変更は、より安全な道路環境の実現に向けた、大きな一歩となるでしょう。 この変更を機に、ドライバー一人ひとりが安全運転への意識を高めることが、より安全な交通社会の実現に繋がると考えられます。