病院は拒否できる権利がある?

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患者には、自らの意思で検査や治療を選択・拒否する権利があります。診療情報の開示請求や、他の医師の意見を求めることも可能です。また、診療過程で得られた個人情報やプライバシーは保護される権利を有しています。

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病院は患者の受け入れを拒否できる? 緊急性・専門性・倫理的理由などを考察する

患者には、自己決定権に基づき治療の選択・拒否、情報開示請求、セカンドオピニオン、プライバシー保護など、様々な権利が認められています。しかし、病院側にも、患者の受け入れを拒否せざるを得ない状況が存在します。本稿では、病院が患者の受け入れを拒否できる法的根拠と、その背景にある倫理的、社会的な側面について考察します。

法的根拠:応召義務と正当な理由

医師法第19条1項には、医師は正当な理由なく診療を拒んではならないとする「応召義務」が定められています。これは、国民が平等に医療を受けられるようにするための重要な義務です。しかし、同時に「正当な理由」があれば、診療を拒否できることも明記されています。

この「正当な理由」として、一般的に以下のようなケースが挙げられます。

  • 緊急性の低い場合: 他の医療機関で十分対応可能な場合、緊急性の低い疾患である場合など。
  • 専門性の欠如: 病院が専門とする診療科以外の疾患であり、適切な医療を提供できない場合。
  • 満床状態: 病床が満床で、新たな患者を受け入れる余裕がない場合。
  • 医療費の未払い: 過去に医療費の未払いがあり、支払い能力が著しく低いと判断される場合。
  • 診療妨害行為: 暴言、暴力、セクハラなど、診療を著しく妨害する行為があった場合。
  • 感染症の危険性: 感染症の疑いがあり、他の患者や医療従事者への感染リスクが高い場合。(感染症法に基づく措置が必要となる場合もあります。)
  • 医療従事者の安全確保: 医療従事者の生命や身体に危険が及ぶ可能性がある場合。
  • 病院の医療機能の維持: 病院の医療機能を維持するために、特定の患者の受け入れが困難な場合。

倫理的・社会的な背景

病院が患者の受け入れを拒否する背景には、倫理的、社会的な要因も存在します。例えば、救急医療の現場では、限られた医療資源を有効に活用するため、重症度や緊急度の高い患者を優先的に治療する必要があります。また、高齢化社会においては、終末期医療や看取りのニーズが増加しており、病院の機能分化が進められています。

このような状況下では、病院は自身の専門性やリソースに応じて、患者の受け入れを判断せざるを得ません。しかし、その判断は、患者の権利を最大限に尊重し、倫理的な観点からも十分な検討が必要となります。

患者の権利とのバランス

病院の受け入れ拒否は、患者の権利を侵害する可能性を孕んでいます。特に、経済的に困窮している患者や、言葉が不自由な外国人患者などは、適切な医療を受けられないリスクが高まります。

したがって、病院は、受け入れを拒否する場合には、その理由を丁寧に説明し、他の医療機関を紹介するなど、患者の不利益を最小限に抑える努力が求められます。また、地域医療連携を強化し、患者が適切な医療を受けられる体制を構築することも重要です。

結論

病院は、応召義務に基づき、原則として患者を受け入れる必要があります。しかし、正当な理由があれば、受け入れを拒否することも可能です。その判断は、法的根拠に基づき、倫理的な観点からも十分な検討が必要です。また、患者の権利を尊重し、地域医療連携を強化することで、誰もが安心して医療を受けられる社会の実現を目指すべきです。

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