繁忙期は何月から何月ですか？

いつが繁忙期？現代ビジネスにおける「忙しい」の定義の変化

「繁忙期」という言葉は、多くのビジネスパーソンにとって、戦々恐々としながらも、同時に、達成感や充実感を感じられる時期を指すのではないでしょうか。しかし、現代のビジネスシーンにおいて、その「繁忙期」の定義は、かつてとは大きく様変わりしつつあります。

伝統的に、日本のビジネスにおける繁忙期は、年末年始、3月中旬から4月中旬（年度末決算）、そして6月中旬から8月下旬頃（夏休み需要）と、明確に特定されてきました。これらの時期は、季節イベントや学校行事、休暇時期と重なるため、需要が急増し、それに伴い業務量も飛躍的に増加するからです。小売業であれば、年末年始の贈答品需要や夏のセール、旅行会社であれば夏休み時期の旅行予約、運輸業であれば帰省ラッシュの輸送といった具合に、業種ごとに繁忙期の具体的な内容は異なりますが、いずれも従来から続く、ある種の「季節性」に強く影響を受けています。

例えば、百貨店やスーパーマーケットでは、年末年始は贈答品の販売がピークを迎え、従業員は連日、品出しや接客に追われます。一方、会計事務所では3月末の決算期に向けて、徹夜作業も珍しくありません。これらの状況は、長年に渡り、業界標準として受け入れられてきました。

しかし、近年のインターネット通販の急激な普及により、この「季節性」に依存した繁忙期の概念は、徐々に変化しつつあります。かつては、特定の時期に集中していた需要が、ネット通販を通じて、年間を通して分散される傾向にあります。クリスマスギフトを11月に購入する人もいれば、夏のセールを6月ではなく9月に利用する人もいます。この結果、企業は、従来の繁忙期以外にも、継続的に高い業務量を抱えることになり、常に「忙しい」状態が常態化しつつあると言えるでしょう。

さらに、コロナ禍を経て、在宅勤務やリモートワークが普及したことも、繁忙期の定義を曖昧なものにしています。場所を選ばずに業務を行うことが可能になったことで、時間や場所にとらわれずに仕事に取り組む人が増え、従来の「営業時間」という概念自体が希薄化しています。結果として、個々の従業員の「忙しい」という感覚は、時間や場所、業務内容によって、より多様化していると言えるでしょう。

このように、現代のビジネスにおける繁忙期は、もはや単純に「いつからいつまで」と断定できるものではありません。年末年始、3月中旬～4月中旬、6月中旬～8月下旬といった従来の繁忙期に加え、それ以外の時期にも高い業務量に対応できる体制の構築が、全ての企業にとって不可欠となっています。それは、人員配置の最適化、業務プロセスの改善、そして、社員のワークライフバランスの維持といった、様々な課題への対応を必要とします。

これからの時代、企業は単に「繁忙期」を乗り越えるだけでなく、年間を通して安定した業務運営を実現し、従業員のモチベーションを維持できるような、より柔軟で持続可能な働き方を模索していく必要があるでしょう。単なる「忙しい」を超え、「生産性」と「持続可能性」を両立させることが、真の課題と言えるのではないでしょうか。