日本語文法で「ていく」と「てくる」の違いは何ですか?

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「いく」と「くる」は、方向を示す動詞の活用形で、話者の視点で動作の進行方向を表現します。「いく」は話者から離れる方向、「くる」は話者に向かってくる方向を表します。

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日本語文法:「ていく」と「てくる」:時間と空間の綾を織りなす表現

日本語の動詞活用の中でも、特に学習者を悩ませるのが「ていく」と「てくる」ではないでしょうか。「行く」と「来る」という基本的な動詞に接続助詞「て」が組み合わさることで、単純な移動だけでなく、時間経過や心理状態といった様々なニュアンスを表現できる、奥深い文法構造です。

確かに、表面的な意味としては、ご指摘の通り「いく」が話者から離れる方向、「くる」が話者に向かってくる方向を表します。しかし、これだけで全てを理解したとは言えません。「ていく」と「てくる」は、時間軸と空間軸の両方において、より複雑な表現を可能にするのです。

時間軸における「ていく」と「てくる」

  • 「ていく」:未来への継続・変化

「ていく」は、ある動作や状態が未来に向かって継続・変化していくことを表します。重要なのは、未来を見据えた視点があることです。

例:

  • 「これから、もっと日本語を勉強していくつもりです。」(これから未来に向けて、勉強を継続する意欲を表す)

  • 「だんだん寒くなっていくでしょう。」(これから未来に向けて、寒くなるという変化を予測する)

  • 「時代はどんどん変化していく。」(未来に向けて、変化が継続していくことを示す)

  • 「てくる」:過去からの継続・変化

「てくる」は、過去のある時点から現在まで動作や状態が継続・変化してきたことを表します。こちらは、過去からの視点が重要です。

例:

  • 「最近、日本語が少しずつ理解できるようになってきました。」(過去の学習から現在に至るまで、理解度が向上してきたことを示す)
  • 「この町には、昔から住んでいます。」(過去から現在まで、継続して住んでいる状態を示す)
  • 「長年研究してきた結果が、ようやく実を結んできました。」(過去の研究が、現在に至って成果を出し始めたことを表す)

空間軸における「ていく」と「てくる」

空間軸における「ていく」と「てくる」は、より直接的に物理的な移動を表しますが、単なる移動に留まらないニュアンスを含みます。

  • 「ていく」:遠ざかる・離れていく

「ていく」は、話者から遠ざかる、あるいは何かがそこから離れていく様子を表します。

例:

  • 「鳥が空に飛んでいった。」(鳥が話者から遠ざかっていく様子)

  • 「バスが走り去っていった。」(バスがその場から離れていく様子)

  • 「彼は黙って部屋から出ていった。」(彼がその場から離れていく様子)

  • 「てくる」:近づく・やってくる

「てくる」は、話者に近づく、あるいは何かがそこへやってくる様子を表します。

例:

  • 「友達が駅から歩いてきた。」(友達が話者に向かって歩いてくる様子)
  • 「良い知らせが舞い込んできた。」(良い知らせが話者のもとにやってくる様子)
  • 「向こうから誰かが走ってきた。」(誰かが話者に向かって走ってくる様子)

心理状態の表現

「ていく」と「てくる」は、物理的な移動だけでなく、心理的な変化や状態の推移を表すこともできます。

  • 「ていく」:感情の変化・消失

例:

  • 「悲しみがだんだん薄れていった。」(悲しみという感情が薄れていく様子)

  • 「彼のことを忘れていくでしょう。」(彼のことを忘れていくという未来の予測)

  • 「てくる」:感情の湧き上がり・高まり

例:

  • 「だんだん腹が立ってきた。」(怒りという感情が湧き上がってくる様子)
  • 「不安な気持ちが募ってきた。」(不安という感情が次第に高まってくる様子)

このように、「ていく」と「てくる」は、単なる方向を示すだけでなく、時間経過、状態の変化、感情の推移といった、日本語の繊細なニュアンスを表現するために欠かせない文法要素です。これらのニュアンスを意識することで、より自然で豊かな日本語表現が可能になるでしょう。

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