ディーゼル車は冬にエンジンがかからないのはなぜ?

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寒冷地では軽油の流動性が著しく低下し、エンジン始動困難となる。これは軽油が低温で固まる性質によるもので、地域によって販売軽油の凝固点が異なる。寒冷地走行時は、長時間停車前に給油し、燃料の凍結を防ぐ予防策が不可欠だ。 特に首都圏の軽油は寒冷地仕様ではないため、注意が必要である。
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冬のディーゼル車、始動困難の真実:軽油の流動性と低温特性

冬の朝、愛車のディーゼルエンジンがかからない…。そんな経験をしたドライバーは少なくないでしょう。ガソリン車に比べてディーゼル車は、特に寒冷地でエンジン始動に苦労することが知られています。その原因は、軽油の性質、そして環境条件に深く関わっています。単に「軽油が固まる」だけでは片付けられない、複雑なメカニズムを見ていきましょう。

まず理解すべきは、軽油の「流動性」です。軽油は、ガソリンと比べて分子量が大きく、より複雑な炭化水素の混合物です。そのため、温度が低下すると、分子間の引力が強まり、粘度が増加します。この粘度上昇が、エンジン始動を困難にする最大の要因です。具体的には、燃料ポンプが軽油を吸い上げにくくなり、燃料噴射ノズルから適切な量の軽油を噴射できなくなるのです。最悪の場合、燃料ラインが完全に詰まってしまい、エンジンは全く始動しなくなります。

「軽油が固まる」という表現は、厳密には正確ではありません。軽油は、一定の温度以下になると、完全に固体になるわけではなく、ワックス状の結晶が析出し、流動性が著しく低下します。この現象は「ワックス析出」と呼ばれ、軽油の成分、特にパラフィン系炭化水素の量に大きく依存します。パラフィン系炭化水素が多いほど、ワックス析出が起こりやすく、低温での流動性が悪くなります。

そのため、販売されている軽油の凝固点(ワックス析出が始まる温度)は、地域によって異なります。寒冷地では、凝固点が低い軽油が販売されており、低温でも比較的良好な流動性を維持できるように工夫されています。一方、温暖な地域で販売されている軽油は、凝固点が高い傾向があります。首都圏などでも、厳冬期には凝固点の低い軽油が供給されることもありますが、寒冷地仕様と比較すると、流動性低下に対する余裕は少ないと言えます。

では、冬場のディーゼル車の始動性を確保するために、どのような対策が必要でしょうか?

まず重要なのは、燃料の選定です。寒冷地へ赴く際には、事前にその地域で販売されている軽油の特性を確認し、必要に応じて凝固点の低い軽油を使用することが推奨されます。 特に長距離ドライブや長時間停車を伴う場合は、給油前に燃料の状態を十分に確認し、必要に応じて燃料添加剤を使用するのも有効です。

次に重要なのは、適切な駐車場所の選定です。極力風当たりの少ない場所を選び、エンジンルームへの寒気の侵入を防ぐことで、燃料の温度低下を抑制できます。また、エンジンを温めるための補助的なヒーターを使用するのも効果的です。

さらに、日頃からディーゼルエンジンのメンテナンスを怠らないことも重要です。燃料フィルターの詰まりや、燃料ポンプの劣化などは、低温時の始動性を悪化させる要因となります。定期的な点検と整備によって、これらの問題を未然に防ぎましょう。

ディーゼル車の冬の始動困難は、軽油の性質と環境条件が複雑に絡み合った結果です。適切な知識と対策を講じることで、安心して冬を乗り越えることが可能となります。 安易な「軽油が固まる」という認識ではなく、軽油の流動性と低温特性への理解を深めることが、ディーゼル車オーナーにとって不可欠なのです。

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